季節のお手入れ
≪栽培一ロメモ その3≫ ランの体温に注目、空冷の大切さ
我々アマチュアのラン栽培は、原生地と環境が全く異なる場所で、さまざまのランを一緒にして育てています。中には温室を分けたり区切ったり、あるいは栽培するランのグループを限定している方がありますが、ほとんどの方は小さな温室に様々のランを全部押しこんでいるのが実情と思います。
ラン栽培と言うと先ず温度の話が出てきます。栽培書でも、どのランは冬の最低気温何度と言うことが書いてないものはありません。それほど大切な温度ですが、そもそもその温度とは何の温度を言っているのでしょうか?一般的には栽培場所の気温を指しています。しかしそれで良いのでしょうか?夏の暑いときや春先、急に気温が上がった時など往々にして葉焼けが起こることがあります。盛夏、気温が30数度に上がっている時に、直射日光下に置かれたレリア アンセプスなどの日に当たっている葉の表面温度を表面温度計で測ってみると40度以上、時には50度を超えていることがあって驚かされますが、これがもし風通しの悪い温室内だったら、先ずは葉焼けを起こしていることでしょう。葉焼けはランの内部組織の温度が上昇して煮えた状態になることによって起きる現象です。この現象を見れば、ランにとって大切なのは周囲の気温ではなくランの体温であることが分かります。盛夏に直射日光下のレリアなどが葉焼けしないでいられるのは、風が葉を冷やして葉の中の温度が葉焼けが起こる温度まで上がらないようにしているからで、空冷されているわけです。
我々は暑い時期には葉焼けが起こらないようにするために、先ず遮光材を張るのが常識です。遮光はたしかに最も容易なランの体温上昇を防ぐ手段ですが、遮光は同時にランの生育に不可欠な光合成を妨げることを忘れてはいけません。風を当てることでランの体温を下げることを優先して考えてください。遮光率を10%でも下げることができるならば、送風装置代も電気代もランの生育のために高いものではないでしょう。
ランの内部の体温を測ることは容易ではありませんが、葉やバルブの表面の温度で代用すれば、それ程高価でない表面温度計(1万円台程度で入手可能)で容易に測定することができますから、いろいろ実験なさることをお薦めします。