2011年2月の例会報告

2011年2月

■2011年2月6日/鎌倉商工会議所会議室
■出席者数:25名
■出品株数:27株

1.古川先生のお話し

今月は「寝たきり患者さん」にランの花を提供したいと、立派な花を6本も例会にご持参いただいた古川先生にお願いして、ランの栽培について下記のような貴重な話を伺いました。

ラン栽培のコツ~肥料とリンの重要性について~(鷹野美重さん要約)

ランの多くは自生地では岩場や樹木に着生して育ちますが、その環境は大変厳しく、また種子はごく微小です。同じ植物でも大豆のように最初から地中に自力で根を張るだけの養分を持ち合わせる種子を持つ植物とは根本的に異なります。

そこでランが生育するために不可欠となるのがラン菌の存在です。ラン菌は微小なランの種子に付いて栄養(糖)を種子に与える役目をします。ラン菌によって種子がある程度成長し膨らむと最初に根が出ます。一般の植物がまず種子の養分で自力で芽を出して葉の光合成を行い養分を蓄えて根を張るのと根本的に異なるところです。

ランの種子から根が出ると、その根の先からまずリン(P)を吸収します。なぜならラン本体への養分を運搬するラン菌もまた、リンにより養われているからです。ラン本体はぺロトン(ラン菌根の細胞の共生菌が作る菌糸魂)が溶解されることで栄養を吸収し、葉の蒸散作用による水分の移動とともに株全体に栄養を十分に行きわたらせようとします。その結果、株は丈夫な葉を茂らせ、その葉は光合成によって糖質を蓄えて立派な花をつけることとなります。

上記のことからわかるように、ラン本体とラン菌は互いに協力しあい作用し合っていますので、その両者の相利共生に必要なリンの供給が肥料の中でも重要な栽培のカギとなります。

肥料には有機肥料(おまかせ・スーパーバイオゴールド等)と無機肥料(ハイポネックス等)がありますが、その両方を適宜に施す必要があります。施肥は下記のとおりです。

有機肥料:成長期に鉢の大きさに合わせて適宜置き肥(注1)
無機肥料:10000倍液肥を3~4日毎に葉面散布または水やりの代わりに施す(注2)

(注1)有機肥料を自家製にする場合の配合:〈油カス5、魚カス・骨粉・米ぬか・鶏糞・バッドグアノ各1〉+〈木酢液・クンタン・殺虫剤〉→水溶液または親指大に3丸めて置き肥とする。
(注2)無機肥料には有機肥料には?ない鉄(Fe)やアルミニウム(Al)等の必要なミネラルが合理的な配合で含まれているため、ごく薄くして施す。液肥は様々な配合で市販されているので、一つの製品にこだわらず種類を取り混ぜて施すと良いが、その際木酢液を加えるとさらに良い。

開花の仕組みには花成素(花成ホルモン=花芽形成を誘導するシグナル物質)が関わりますが、この花成素がリンの化合物であることが2007年に証明されたことから、ランであれ他の植物であれ、花芽形成期に主にリンを含む肥料(ハイポネックスN0-P6-K4等)を花芽形成補助剤として施すことは立派な花をたくさんつけるためには極めて重要なことだと判ってきました。
デンドロビュームは夜温15度以下になると花芽分化が始まります。胡蝶蘭は18度以下です。従ってこの時期前にリンを含む肥料が必要になります。カトレアはバックバルブ3本の充実が新芽の花芽分化を後押ししますので、バックバルブ3本に花芽形成補助剤を葉面散布します。葉面散布の際、汲み置きしてカルキ分を飛ばした水や井戸水を使用すると水道水のカルキが葉面に白く残ることが無くなります。
また、蕾のまま開花しない(しけ花)場合その蕾の花粉魂をみると黒変して枯死しています。開花中の花の花粉を除去すると花は閉じます。花成ホルモンの他にも花粉に開花させるホルモンがあることは学会でも発表(名古屋大)されています。
温度、湿度等の環境の急変が原因となっていることが多いようです。 以上

※ 詳しくは会員コンテンツ・会報をご覧ください。

お知らせ

(1) フラワードーム2011名古屋国際蘭展

日時 3月11日(金)~14日(月)
場所 名古屋ドーム

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